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衛生仮説が裏づける
必要性

酢酸菌

衛生仮説って何ですか?

衛生仮説って何ですか?

男性キャラクター

衛生仮説、はじめて耳にしました。どんな内容なんですか?

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

「現代人にアレルギー体質が増えている原因は、過剰なまでの衛生環境にある」と指摘した学術理論です。今この衛生仮説が、学会でもたいへん注目を集めているんですよ。

男性キャラクター

アレルギーと衛生環境にどんな関係があるんですか?

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

そもそもアレルギーとは何だったか、覚えていらっしゃいますか?

男性キャラクター

覚えています!「免疫細胞の勘違い」ですよね。

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

その通りです。本来、私たちの体に備わっている免疫細胞は、病原菌やウイルスが体内に侵入してきた際、それらを察知し、体外へ追い出すために機能します。

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

しかし、花粉やホコリなどが体内に侵入してきた際も、免疫細胞が病原菌と勘違いして、くしゃみや鼻炎が止まらなくなる場合があります。これがアレルギーの正体です。

花粉ホコリ病原菌勘違い!
免疫細胞の過剰反応こそ、
アレルギー正体

花粉やホコリを病原菌と勘違い!免疫細胞の過剰反応こそ、アレルギーの正体花粉やホコリを病原菌と勘違い!免疫細胞の過剰反応こそ、アレルギーの正体

男性キャラクター

私は花粉症なので、勘違いしやすい免疫細胞ということですね…。そんな勘違いを起こす免疫細胞と衛生環境に、因果関係があるんですか?

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

じつは、衛生的でキレイな環境に住む人はアレルギーになりやすく、少し不衛生な環境に住む人の方がアレルギーになりにくいことが分かっています。

男性キャラクター

え!キレイな環境で暮らす人の方が、アレルギー体質になりやすい!?

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

ええ、じつはそうなんです。下のグラフを見てください。
衛生環境の整っていない戦後の日本は、結核や寄生虫による病気が多い一方、アレルギー患者はほとんどいません。

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

1970年を過ぎ、どんどん衛生環境が整ってくると、寄生虫などの病気はなくなりますが、花粉症、鼻炎、アトピーなどのアレルギー患者が一気に増加していることが分かります。

戦後、衛生環境が整うと同時に、
アレルギー患者増加!

戦後、衛生環境が整うと同時に、アレルギー患者が増加!戦後、衛生環境が整うと同時に、アレルギー患者が増加!

男性キャラクター

本当ですね。衛生環境の改善とアレルギー患者の数が、反比例しています。

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

戦後の日本は、衛生環境が整っていない分、山や川、田畑などの土壌が住環境の周りにあり、自然と体内に多種多様な菌が入ってきました。免疫細胞が、さまざまな菌の情報をインプットできる環境だったのです。

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

そのような環境で育つと、有害な病原菌とそうじゃない物質を勘違いせずに、きちんと見分けられる免疫細胞になります。
アレルギー体質になりにくいということです。

農耕

土壌の多い環境は、
多種多様な菌に触れられる
勘違いしない免疫細胞に育つから、
アレルギーと無縁へ!

土壌の多い環境は、多種多様な菌に触れられる 勘違いしない免疫細胞に育つから、アレルギーと無縁へ!土壌の多い環境は、多種多様な菌に触れられる 勘違いしない免疫細胞に育つから、アレルギーと無縁へ!

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

一方、現代は衛生環境が整備されています。とくに都心部などはアスファルトやコンクリートだらけ、菌が生息できる土壌がほとんど見当たりません。

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

また、除菌殺菌は必要なものですが、過剰になりすぎると、ますます菌と触れあう機会が減少してしまいます。

都市

男性キャラクター

免疫細胞が、菌の情報をインプットする機会が減っている、ということか。

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

その通りです。正しく菌を見分けられない免疫細胞は、花粉やホコリにまで過剰反応し、アレルギー症状が出はじめます。

土壌の少ない都会は、
菌と触れ合う機会少ない
勘違いしやすい免疫細胞に育ち、
アレルギー体質へ!

土壌の少ない都会は、菌と触れ合う機会が少ない 勘違いしやすい免疫細胞に育ち、アレルギー体質へ!土壌の少ない都会は、菌と触れ合う機会が少ない 勘違いしやすい免疫細胞に育ち、アレルギー体質へ!

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

これが、日本国民の2人に1人がアレルギー体質になってしまった原因の一つです。
他にも、さまざまな菌と触れあう環境で暮らす人の方が、アレルギー体質になりにくいという疫学調査が世界中で報告されています。

農耕民アーミッシュはアレルギ−発症率1/10

ミュンヘン大学のエリカ・フォン・ムティウス教授は、米国の農村部で農耕・牧畜を主体にした自給自足生活を送っている「アーミッシュ」と呼ばれる宗教集団の子どもは、花粉やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の罹患率が、都市部に居住する人びとに比べて10分の1程度しかいないという疫学調査データを発表しました。

出典:NHKスペシャル取材班『アレルギー医療革命 花粉症も食物アレルギーも治せる時代に! 』(2015;文藝春秋)

アーミッシュ1

アーミッシュ2

兄弟姉妹が多いほどアレルギーになりにくい!

英国の疫学者、デヴィッド・ストラカン博士は1953年3月に生まれた英国人1万7415名を対象に、アレルギー疾患の発症と関連する環境要因を調査。

兄弟の数が多い人ほど、花粉症などアレルギー疾患を持つ人の割合が小さいこと、またきょうだいの中では長子がアレルギーの罹患率が高いことを明らかにしました。

Strachan DP. Hay fever, hygiene, and household size. Bmj 1989; 299:1259-60.

衛生仮説

男性キャラクター

農耕民だったり、兄弟の数が多かったり。無菌状態より、いろんな菌と触れあう環境の方が、アレルギーになりにくいんですね。

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

その通りです。また、農村で暮らさない人の花粉症発生率は約3倍にもなる、というデータまであります。

男性キャラクター

ちなみに私は子どもの頃、山に囲まれた田舎に住んでいました。遊び場も田んぼや畑ばかりだったのですが、大人になってから花粉症と通年性のアレルギー性鼻炎を発症しました。
さまざまな菌を体内にとりこむ生活は、子どもの頃だけじゃダメなんですか?

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

はい、じつは「免疫細胞の教育」は継続性がすごく重要なんです。
また大人になってからでも、ガーデニングや週末農業など、たまに土いじりをしたくらいでは、十分に免疫細胞に菌の情報をインプットすることはできません。

男性キャラクター

そうなんですか…何か代わりになるよい方法はありませんか?

ガーデニング

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

じつは、アレルギー体質の現代人に不足している菌の種類が、最近の研究で明らかになりました。

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

その菌を意図的に摂取できれば、免疫細胞の勘違いを抑え、アレルギー体質の改善を進めることができます。

男性キャラクター

すごい!それはなんという菌ですか?

キユーピー株式会社 酢酸菌研究 博士 吉岡 智史

酢酸菌に代表される、グラム陰性菌と呼ばれる種類の菌です。次のページで詳しくご説明します。

※Braun-Fahrländer, Charlotte, et al. "Environmental exposure to endotoxin and its relation to asthma in school-age children." 
New England Journal of Medicine 347.12 (2002): 869-877.